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【いたずら・4】 『何だよ、あれ。』 最悪だ。 自分の運の悪さを呪った。 何が楽しくて、自分の好きな女が他の男から抱き締められてるとこを目撃しなきゃならないんだ。 あいつは俺がキスをした時と同様、大した抵抗をするわけでもなく、 後ろからあいつ自身を包み込むような銀髪の男の手を、大人しく受け入れていた。 しかもその状態のまま、そうして触れ合うことがとても自然な流れのことのように笑顔で語り合う様子まで見えてしまった。 この日ほど自分の視力の良さを怨んだ日はない。 当たり前だが、唇を奪った日から俺はあいつと目を合わせることができない。 元々たくさん話す相手ではなかったことが、唯一の救いだ。 周りからいろいろ詮索されずに済むから。 そうは言っても、この状態が1週間近くも続くとさすがに調子が狂ってくる。 話したいような、 そっとしておきたいような、 またこの薄い皮を壊してしまいたいような、 じれったい思いは延々と続く。 俺以外の奴と普通に話している。 下らない冗談に笑っている。 女友達と肩を叩き合ってスキンシップを取っている。 あいつの視線が俺自身に向けられていない。 以前まで気に留めていなかったあいつの些細な行動の一つ一つが、 俺と無関係なところではたらいているだけでなんだかイライラした。 ただなんとなく漠然とした“好き”という気持ちが、まさかこんなに大きな独占欲を生み出すなんて思ってもみなかった。 よくよく考えてみると中途半端な思いを抱いている奴に、 あんな大胆な行動ができるほど俺は肝が据わっている男ではない。(自分でこう言うのも虚しいが) 華奢な体。 流れるような黒い髪。 ほのかに香る、シャンプーの香り。 思い出すだけで、唇が熱い。 部活中だというのに、あいつを胸に抱いたときの感触を思い出したおかげで身体が火照る。 熱くなった顔を冷ますため、近藤さんに一声かけてから中庭の水道に向かう。 竹刀を握っても集中できないほど重症らしい。 水を浴びたら今日は上がらせてもらおうと、蛇口に手をかけた瞬間… 『あっれー?土方くんじゃん。』 最悪だ。 今日の俺は、とことんツいてないらしい。 |
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