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お相手は獄寺隼人さんです。





「…なに一人で笑ってんだ」

 不意に後ろを振り返った獄寺が怪しいものを見るかのような視線をわたしに向けて、気色悪ィと言葉を続ける。はっとして緩みきっていた頬に力を入れて、「気色悪いは余計でしょ」と口を尖らせる。
 フンと鼻を鳴らして前を向き直ると、獄寺はさっきみたいに煙草を吹かし始めた。白い靄がふわりと風になびいては消えていく。煙草はきらいだけど、それをぼうっと眺めるのはきらいじゃなかった。…まあ、それも獄寺限定なんだけどね。

「獄寺」
「…ん」
「わたしもそれ、吸ってみたい」
「…お前、煙草きらいだろ」
「きらい。煙いし、服に臭い付くし」
「だったらなんでだよ」
「うーん…思い付き?」

 獄寺の隣まで足早に歩を進ませて、二人並んで歩く。いつもはあんまりしないことだから、どこかこそばゆくて気恥ずかしい。
 獄寺は再度怪訝そうな視線をわたしに向けた後、なにも言わずにフンと顔を背けた。結局獄寺がくわえている煙草は吸わせてもらえなかったけれど、わたしも大して期待はしていなかったからそのまま二人並んで家路を歩いた。長いような、短いような、そんな微妙な感覚がちょっと歯痒い。

「獄寺」
「なんだよ」
「家、もうすぐだね」
「おう」
「…獄寺、変なこと頼んでいい?」

 視線をわたしに移して「なにさせる気だよ」と首を傾げる獄寺の前にすっと手を差し出す。わたしの意図がさっぱりとわからない獄寺は、目をぱちくりさせて凝視する。獄寺って案外鈍いんだと思いながら、「…手」と言葉を発してみる。さらに首を傾げてわたしの手を見つめる獄寺に、溜め息混じりに言う。

「手…つないで歩きたい」

 緑色の瞳を大きく見開いて、わたしを離さない。相変わらず綺麗な色してるなあと感心しながら、獄寺の反応を待った。
 一瞬間固まった後、獄寺は口を金魚のようにぱくぱくさせて頬を赤く染めた。そのせいでくわえていた煙草が地面に落下して、もったいないなと思いながら視線を獄寺に戻した。

「獄寺、顔、赤い」
「!!ち、ちげー!」
「…もしかして照れてるの?」

 図星なのか何も答えない獄寺は、ぷいと顔を明後日の方向にやる。そんな獄寺の行動に可愛らしさを感じながら、自然にわたしの表情に笑みが浮かぶ。
 ふと小さな声でぶつぶつと何かを唱えるのが聞こえて、わたしは思わず聞き返す。すると獄寺がゆっくりとこちらに顔を向けて罰が悪そうに、呟く。


「……照れて、わりーかよ」



いとしい少年
執筆:20110116 公開:20100725
word/確かに恋だった





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