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拍手有難うございました。 綺麗なままでいたいなんて、そんなことを考えてはいない。 そんなことを考えられるほど、愚かしくはいられなかった。 それが、正しい生き方だと、そう思ってきた。何も疑いはしなかったんだ。 なのに、なのに…。 君の涙はとても美しくて。 彼を愛してしまったのだと、顔を歪ませる君は、とても、とても綺麗で。 ああ、彼女は私とは違うのだな、と。 心の奥の辺りにその事実がするりと入ってきたんだ。 その時、今まで自分を造ってきたものの正体を、認識せざるをえなかった。 ちっぽけでも、譲ることの出来なかったくだらないプライド。 素直であることへの、戸惑いと劣等感。 自分の震える脚を支えてきたものは、その程度のルサンチマンだった。 でも、そんなことを知ったからって何が変わるのだろう。 今更、君のように綺麗にはなれない。なるつもりもない。 今更だ。 君と私は違い過ぎる。 どこで道が分かれていたのだろうか、そもそも最初から用意されていた道が違っていたのか。 それすらも、今更だ。 君は美しい涙をハラハラとおとし、私はそれを眺めて私の中にあるそんなくだらないものに縋り付き、 震える脚を辛うじて支えるんだ。 −−だからその澄んだ眼を閉じて、さらさらな涙を流すのをやめて。 |
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