[2.午後の屋上]

お昼を食べて、少し休んでから仕事に戻ろうと思い、屋上に来ていた。
夏も終わり、秋口の午後は爽やかな風が吹いて丁度いいくらいだ。さあああ、と風が頬をゆっくりとかすめて彼方へ消えて行った。
目を細めてそれを見送れば、扉の方からギイイ・・・という渋い開閉音に続いて、聞き慣れた低音の声が耳朶を穿つ。

「此処にいたのか」
「カイン!?どうして?・・・・」

彼はその端正な顔に笑みを刻み込んで笑った。

「ヒマ、だったから」
「私これで仕事戻るわよ。夜まで帰れない」
「良い。待つのは嫌いじゃない」

オギの所にいってくる、と言って、隣に居座ってしまう。
呆れ果てて、その顔を見ながら聞いてみる。

「太陽出てるのに。大丈夫?」
「大丈夫、ではないな」
「じゃあこっちきて」

言うが早いか、入り口の影に彼を引っ張りこむ。日陰で見る彼はやはり青白かった。

「もう、どうして分かっててココきたのよ、そもそも」
「だって」

その次を聞く前に、掴んでいた腕を今度は逆に利用され、ぐいっ、と力強く引き寄せられ、

「んっ・・・・」

唇に重なる、唇。

「ふっ・・・・」

柔らかく食まれて、小鳥のようについばまれて、合間に長い犬歯が舌を掠めた。
しばらく続いた行為を終えて、カインが悪戯な瞳をこちらに向けて手は身体を抱きしめた。

「夜まで、待てなかった」

「なっ!・・・・嫌いじゃないって・・」
「ルナを待つのは。したいのは別だ」

何を言ってるんだ、とマジメに・・・否、目が笑って言った。ちゅっ、と前髪に口付け、顔をのぞきこんでいる。

「さいって・・・こんなとこで」
「こんなとこじゃなきゃいいのか」
「そういうことじゃないわよ!ばか!もう!」

かああ、と紅くなる頬は、止められそうに、ない。



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