「三国恋戦記」より

本当に、言いたいことは山のようにあったのだ。
でも、何か吹っ切れたような彼の顔と幸せそうな彼女の顔を見たら、引き止めることなんてできなかった。

高く澄んだ青い空と、どこまでも続く大地。
訓練場から響く音、街角で聞く笑い声。
廊下を走る足音と、書簡を開く音。
尊敬する主と信頼できる仲間たち。

「花、あなたは今、幸せなんでしょうね」

人が欠けても変わらない日常の中で、芙蓉は花の望んだ世界を思い描く。
明日を諦めなかった、花を思い出す。

もうきっと、二度と会えない、遠い国へ帰っていった。
それでも、あなたの残したものは、今もここにある。
「それで十分よ」
過去に縋りはしないけれど、それは今の芙蓉を支える大事なものだ。
「私も、もっと幸せになるから、心配しないで」
芙蓉は隣に立つ彼に向かって、微笑んだ。
 
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