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(ライドウ・鳴海とライドウ) 学校帰りの女学生たちの横をすり抜け、町の人の声に会釈を返しながら、ライドウは家路に着く。 上司が夜間の捜査を基本的に禁止しているので、いつも夕刻にはこの川べりの道を通ることになる。 今日も良い天気だった。 夕暮れの美しさに目を細め、ライドウは鳴海探偵社の扉の前で足を止めた。 取っ手に手をかける一瞬、一度だけ小さく息をする。深呼吸というほどでもない。毎日の習慣のようなものだ。 「ただいま帰りました」 いつもの挨拶。 「おかえり」 いつもの返事。 視線を上げれば、机の後ろ、窓際に探偵がいる。笑顔だ。 窓からの光で逆光であるのに、はっきりとわかった。 いつもの。 息が止まる。 あまりにも毎日の光景過ぎて、それは唐突にライドウの胸を衝く。 あまりにも。 優しく暖かくて。 「ラ・イ・ド・ウ。どしたの?帰るなり」 からかうような声で我に返ると、鳴海が苦笑した。 「・・・お前ねぇ。そんな顔するなよ、あんまり大人を困らせるもんじゃない」 自分がどんな顔をしてるのかはわからなかったが、ライドウは慌てた。 「す、すみま」 「あーいやいや。間違えた、いいんだ、それはいいんだよ。お前はもっと大人を困らせるくらいのほうがいい。きっとね。」 謝りきる前に止められた。 甘い声だった。 ライドウは顔が熱くなるのを感じる。 こんなときこそ、いつもの軽口を叩いてくれればいいのに。ちょっと恨めしい気にすらなる。 こういう瞬間に、突然気付かされてしまう。 この場所を、自分がとても、とても愛しく思っていることに。 優しいお心、ありがとうございました! |
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