寝ている。隣に寝ころび静かに寝息をたてるヒソカを見て、イルミは彼の睡眠を邪魔しないようにその頬にふれた。決してヒソカを気遣ったわけではなく、ただ単純に自分がこういった行為をしていることを知られたくなかったからだった。先程ふと目覚めて外を見ればもう外は明るみ始めていた。朝が近い。朝は嫌いではないが、どちらかと言うと夜の方が好ましかった。仕事もし易ければ、この男とも。そこまで考えて、イルミは眉根をよせた。あまり考えたくないが、自分はこの男に会える夜をどこか待ち望んでいるのかもしれない。それは、よろしくない。
そこまで考えて、何気なくヒソカの身体を覆っていたシーツを捲った。自分の身体と同様に何も纏われていないその身体。違うのは、自分の身体には赤い情事の痕が残されていて、ヒソカの背にはツメで引っ掻いた線が残っているということ。それが少し前まで行われていた行為を思い出させ、イルミは更に深く眉をよせた。あの行為の最中の事を思い出してもそれはただただ恥じでしかない。何度か目を瞬かせ、そうして再度開いた時、イルミは目の前に眠る男の頬に当てていた指を滑らせその唇にあてる。その瞬間意地悪い男の「我慢できないのかい」という、行為の最中に紡がれた言葉が蘇って、ぞわりと身体が震えた。同時に苛立ちが湧きおこる。何が我慢できないの、だ。我慢ができないように何度も何度も自分の身体を躾け苛みいたぶり続けるのは他でもないヒソカではないか。初めはなんともなかったのに、今こうして思いだすだけで身体が疼くような感覚は、全てこの男が自分に与えたものだ。忌々しい。殺した方がいいのではないだろうか。唇にあてていた指を再度滑らし、首筋にあてる。ぶらりと垂らしていた空いている手も同じように首筋に。
ここに少し力を込めれば、先程自分が抱いていた想いが成就されるのかとぼんやり想う。それはとても魅力的で、しかしそうしてはいけない事を、誰よりイルミ自身がよく理解していた。その想いのままに、面倒くさそうに呟く。
「何してんだか」
「…ほんとになにしてるんだい?」
突然返ってきた言葉に一瞬だけ目を見開き、すぐに視線を動かせば、眠っていると思っていたヒソカの目がしっかりと開かれていた。口元にはいつもの人を食ったような笑み。
「……寝たふりなんて、性質が悪いね」
「別に寝たふりなんてしてないよ。流石に首に手をあてられたら起きるでしょ。僕そこまで生ぬるい生活してないよ」
「絶してたのに」
「僕の感度知ってるでしょ」
「……最悪」
「で、何してたの?僕を殺そうとしてた?」
身体を起こして薄く笑うヒソカを少し眺めた後、イルミはだとしたら?と問うた。それを聞いたヒソカはくつくつと笑って言った。
「イルミって、欲情すると目を細める癖があるよね」
「…は?」
「殺そうとした相手に欲情するなんてイルミ、僕じゃあるまいし」
「……何言ってるの」
「見たままを言ってるの。まあ君と殺し合うのもすごく魅力的なんだけど、今は別の事しようよ」
どさりとヒソカがイルミを押し倒す。抵抗してやろうかと思った直後、身体を襲った感覚に、イルミは今度こそ意識して目を細めた。確かに殺し合うより、今は別の事がしたい。



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