ありがとうという言葉*沖田編*







“ありがとう”その言葉が中々云えなくて。

でも、いつも思っているよ。
ありがとう。

いつも見ていた君の姿。

洗濯をしてくれている君の姿。

御飯を作ってくれている君の姿。

僕の身体を気遣ってくれている君の姿。




今は針仕事をしてくれている君の姿が目に入る。


『何やってるの?』


「あ、沖田さん。今皆さんの羽織の綻びを直してて」


『ふぅん……お人好しな子だね……君は居候で何の得にもならないって言うのに……』



それでも君は微笑んで、

「私は……少しでも皆さんのお役にと……少しでも皆さんが楽を出来るといいなって」



『…益々お人好しだね…もしも僕が君の立場でも絶対にやらないなぁ…
 …面倒だし、自分の特にならないし』



「そうですか?」


笑みを浮かべながら手を動かす君の隣に腰掛け、耳元に近寄る。


『でも…ありがとう……いつも感謝してるよ』



早口に言葉を終えてすぐに顔を背けてみた。


「沖田さん……沖田さんに言って戴けるともっと頑張れます」



ちらっと君を見ると鼓動が早くなってしまうほどの笑顔の君が居た。



『僕も………綻び直すの手伝うよ……』



なんて僕らしくないことを言葉にして君にきゅうきゅうになるほどに近寄り、



不器用な手と僕の心が動き始めた。










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