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*短編先行公開*
■朝6時


 布団の中から腕が伸び、流行のアーティストが歌うラブソングを枕元で奏でていた携帯電話のアラームを止める。腕の主の少年は「うー」とか「んー」とか二、三度うなった後、再び眠りに落ちた。

 三分後、スヌーズ機能によって再び鳴り始める携帯電話。

 十秒ほどたった後、同じように布団の中から腕が伸びて来て、携帯電話を鷲づかみにし、三分前と同じようにアラームを止める。そしてまた、眠りに落ちた。

 三分後。三度、音楽が鳴り響く。

 しかし、今回はなかなか腕が伸びてこない。むしろ、体ごと布団の中へ中へと潜り込んでいる。三十秒ほどそうしていただろうか。けたたましく響く音楽に耐え切れなくなったのか、うなり声と共に腕が伸びてきてアラームを止める。

 部屋が静かになった。

 前回まではこのまますぐに眠りだした少年だったが、今回はどうにも様子が違う。寝返りを打ってみたり、うつ伏せになってみたり、足を曲げたり伸ばしたりと、なかなか寝付けないようだ。
 しばらくそんなことを繰り返していると、どうやら眠気が蘇ってきたようで、少年のまぶたが重くなっていった。そのまま彼がまどろんでいると――

 アラーム音が鳴り響いた。

 一瞬ビクッとなった後、苛立ちをぶつけるかのように布団を吹き飛ばして携帯電話に手を取り、間髪入れずに音を止める。そしてその勢いのまま布団の上で上半身を起こし、座り込む。
 しかし少年は、ボーっと下のほうを見つめるばかりで、立ち上がろうとしない。どうすれば、象を背負って走ることが出来るか考えていたからだ。つまり、まだ寝ぼけていたのだ。
 しばらくそうしていた少年の思考を中断したのは、またしても携帯電話だった。

 本日五度目のアラーム音である。

 少年は、ハッと我に帰って携帯電話を手に取り、アラーム機能を完全にストップさせる。そして、座ったままで大きく一度伸びをすると、布団から立ち上がり、家族のいるリビングへと目をこすりながら歩いていった。

 五回のスヌーズ機能をフルに使い、少年は毎朝目を覚ます。時刻は六時十五分。リビングのテレビからは、流行のアーティストのラブソングが流れていた。





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