新作ネタその1「幼馴染の幽霊との再会」 出会ったのはもう記憶も拙い小さな頃。 一人で壁に向かってボールを投げていた僕に向かって話しかけてきた。 「ねぇ、私とキャッチボールしてくれない?」 彼女はランドセルを背負っていて、僕より高い目線でこっちを見ていた。 どんな会話をしていたのか、それともただ黙ってキャッチボールをしていたのかは覚えていない。 ただ、覚えていることはある。 最後の一球と言って彼女の投げた重い重いボールと、それを責めた僕にイタズラっぽく笑う彼女の綺麗な髪に反射した夕陽。 それから毎日毎日、二人でキャッチボールをするようになった。 いつも、最後の一球になると、彼女は僕が取れないくらい重くて速い球を投げてきた。 それを僕が拾いに行っているうちに帰ってしまう女の子だった。 でも、一週間後、名前も知らないまま彼女は、僕の前から消えた。 なんでも、急に決まった再婚での引越し。 最後の最後。 最後の一日、最後の一球。 その一球で、大喧嘩。 そしてもう一度出会ったのは、高校に入って一月ぐらい。 天文部の友人が屋上の鍵を持っているなんて言うから野球部の練習を見下ろしながら弁当でも食うか、と屋上に足を踏み入れた時。 そこに、彼女はいた。 一般的に言う、幽霊だったけど。 |
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