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拍手ありがとうございました。とっても励みになります。 そんなわけで、お礼の小話をよろしければどうぞ。こっそり、森崎くんと翼くんです。 心地よいリズムが躯を揺らす。人のざわめきが遠くから聞こえてくる。そして、温かい躯の左側。 うっすらと目を開けると、談笑をする女子高生の後ろ姿がぼんやりと目に入ってきた。 あれ? 翼の意識がはっきりしてくると、いくつかの疑問が湧いてくる。 ここ…電車の中だよな…。なんで、俺、電車に乗ってるんだっけ…。えーと…。 「翼…目が覚めた?」 その声に、慌てて声のした方を見上げる。 「おはよう。」 明らかにそぐわないその時間に、そんなことはおくびも感じさせない笑顔を添えて森崎が翼にその言葉を投げかけた。 「え、あ…森崎?!」 完全に目が覚めた。確か今日は、サッカー部の後輩に卒業記念の品を選ぶために静岡に出かけてきていたはずだった。 確かに森崎の腕の中にはリボンのかけられた大きな袋が収まっている。 いつの間にかすっかり自分の体重を森崎に預けていた。慌てて自分の体勢を整える。 「ご、ごめん!俺、寝てた?!」 今更、その質問もないだろうが、思わず聴いてしまった。 「うん。きっと、疲れてるんだよ、翼は。後輩の指導で朝は早いし、今日だって帰ったらポルトガル語の勉強するんだろ?睡眠時間が足りないんじゃない。」 労りながら、ちょっとだけ窘めるような空気も見せながら、それでも笑顔で森崎が言う。そんな笑顔に翼の顔も綻ぶ。 笑顔と言えば、翼の専売特許のように言われているが、森崎のちょっとはにかむような笑顔はなんだかとっても安心する。 「なんか、森崎って癒やし系だよね。」 思わず、翼は正直に言ってしまった。言われた森崎の方は、なんだかぴんとこないらしく今度はホントに困ったような苦笑をその表情に浮かべている。 「…ところで、次、どこの駅?」 電車の外の風景を見ながら翼が尋ねる。 「うーん。新清水かな?」 「え?」 確か、ちょっと寄り道をして草薙の総合運動場に行ってきて、新静岡に戻る電車に乗ったはずだった。新清水は明らかに反対方向。 「ちょっと待って。もしかして…折り返しちゃったってこと?」 「……う…うん。」 肯定の返事をしてもいいものか…。でも、事実は事実だから森崎は肩を竦めながら返事をする。 「何で!起こしてくれればいいのに!」 確かに眠ってしまった自分が悪いんだけれど、思わず、そんな言葉が口から紡がれる。 「…だって、…なんか起こすの可哀想になっちゃってさぁ。すごく、気持ちよさそうに寝てたよ?翼。」 そう森崎に言われて、翼もなんだか力が抜けてしまう。 「…ごめん。迷惑かけちゃった。」 「そんなことないよ。ちょっとおもしろかったし。」 「何?俺、なんか変なコトした?!」 翼の顔色が変わる。過去に何があったわけではないが、意識がないうちに何をしていたかなんて誰にも分からないのだから、『おもしろい』なんて言われた日には、ドキドキしてしまう。 「ううん。電車の中って、いろんな人が入れ替わり立ち替わり入ってきて、おもしろかった。」 「なーんだ。」 ふうっと大きく息を吐く。とりあえず、『おもしろい』ことが自分の事で無かったから一安心。 「安心した?」 「うん。」 そんな話をしていたら、終点の新清水に到着した。二人は、ホームに降りると向かいの電車に乗り換える。 「今度は寝ないから!っていうか、寝てたら起こしてよね。」 振り向きざまの翼の笑顔。 「ああ、分かったよ。」 とりあえず、応えてはみるけれど…。 さっきの右肩の心地よい重さと温かさをもう一度味わってみたいと思う森崎だった。 END (2013.03.17 UP) |
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