|
拍手ありがとうございました。とっても励みになります。 そんなわけで、お礼の小話をよろしければどうぞ。ちなみに 『TWINS』ネタでございます。 「あれ?何かいい匂いがする。」 前を歩いている翼の呟きに、くんと周囲の空気を吸い込んで三杉が応える。 「ああ、これは…金木犀だね。見たことないかい?」 「キンモクセイ?」 翼が軽く首を傾げながら振り向いて三杉を伺う。 「オレンジ色の細かい花が咲くんだ。」 「へえ、三杉くんって物知りだねえ。」 そう言いながら翼はキョロキョロと辺りを見回して、そのオレンジの花を探している。 秋の夜空はどこまでも澄んでいて、ちょっと肌寒い。フルリと身体が震えた三杉は、目の前の 翼が半袖一枚なのに気がついた。 「翼くん、寒いだろう?もう戻ろう。」 「えー、大丈夫だよ。キンモクセイ探したいし。」 寒さなんて感じていないという風の翼は全く聞く耳持たずのお返事だ。 医療班班長の権限を使って連れ戻してもいいけれど…。 「じゃあ、早く見つけてしまおう。これだけ薫っているなら、すぐ近くにあると思うよ。」 結局、こう言ってしまった。 「うん。」 そもそもこんな時間に翼がココにいるのは、任務で受けた怪我の治療のため、反町のラボに 泊まりを言い渡されているからで。本当だったら、早く帰さなくてはいけないのだけれど。 「あ、あった。あれ?」 翼が指さした先には、濃い緑色の葉の間に鮮やかなオレンジ色の小さな花が咲いていて、 その木の下には、落ちた花でできたオレンジ色の溜まりができている。 翼はその木に駆け寄ると、背伸びをするようにして大きく深呼吸をした。 「やっぱり、これだね。えーと…キンモクセイ?…だっけ。」 「そう。金木犀。立派な木だね。とてもいい香りだ。」 三杉がゆっくり近づいてくると、翼はギプスをしていない左手で落ちているキンモクセイの花を 指先でそっとつまんだ。指先でがくをつまんでくるりと回すとにっこり笑う。 「ね、三杉くん。ちょっと向こう向いてて。」 「何をする気だい?」 「それを言ったらつまんないだろ?」 そりゃごもっとも。 三杉は、ゆっくりと翼に背を向けると、秋の星空を見上げる。 カサカサと何か細かいものがこすれ合うような音がして、『もーいーよ』と声がかかった。 三杉は、ゆっくりと翼の方を向いた。すると、勢いよく振り上げられた翼の左手に乗せられて いた掌一杯の金木犀の花びらが空に放たれ、辺り一面に芳醇な香りをまき散らしながらゆっく りと地面に落ちていく。 「やっぱり。なんだか、星が降ってきたみたいだね。」 そう言いながら、翼の笑顔が零れる。 確かにオレンジ色の小さな花がくるくると回りながら落ちていく様は、きらきらと光る小さな星 が地上に落ちてきたようにも見えて…。 「そうだね。」 三杉も、笑顔でそう応えた。 翼が任務で怪我をしたのも偶然で、今夜、自分の仕事のために残っていたのも偶然で。でも 、この偶然が、かけがえのない思い出をくれた。 これからもきっと、季節が巡って、この金木犀が薫る度に思い出す。きっと…。 (up:2011.10.05) |
|
|