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そんなわけで、お礼の小話です。TWINS 三杉さんと翼くんです。




 
「翼くんの夢ってなんだい?」

 不意に尋ねられたその言葉に、翼は首を傾げた。

「夢?」

 定期検診の後、自分だけ医療班のスタッフルームに残されて、ちょっとへこんでいた翼に、同じくスタッフルームに詰めていた三杉が声をかけてきた。

「えーと……、三杉くんは?」

 いきなり夢と聞かれても、なんと応えたらいいやら。とりあえず、三杉の考えを聞こうと翼は三杉に言葉を返した。

「そうだね。やっとエージェント試験に合格できたし…やっぱり、TWINSみたいなすばらしいエージェントになることかな?」

 翼の横に座った三杉から、そんなことを言われて…でもやっぱり何となくピンとこない。更に言うと、自分が、三杉が言うところの『すばらしいエージェント』である自覚は翼自身にはあまりない。誰にも負けない、という自信と自覚がないわけではないが、それはあくまでも自身の問題であって、他者に評価されるためのものでは無いと思っている。

「『なる』ってことが夢?」

 翼の質問の意味が今ひとつ分からない。三杉は苦笑混じりに小首を傾げた。そんな三杉の姿に、自分の言葉が足りなかったのだろうと、翼がもう少し丁寧に話をする。

「えっとね。三杉くんは、すばらしいエージェントに『なる』のが夢なんだよね。だから、なにかに『なる』ってことが夢ってことなのかな?って。」

 ああ、と納得した様な表情に変わった三杉が、花のような笑顔を翼に向けた。

「『なる』だけじゃなくて、『できる』ってパターンもあるよ。何かができるようになりたいっていうのも、夢の一つだよね。」

「『できる』か~。…それならあるかも!」

 翼はそう言って、パン!と胸の前で両手を打った。さっきの三杉に負けない太陽のような笑顔をその顔に映している。

「じゃあ、改めて。翼くんの夢ってなんだい?」

「えっとね。お兄さんと若島津くんみたいに、お料理ができるようになりたい!二人が作るご飯は、とっても美味しいよ。美味しいご飯は、食べると胸がポカポカするよ。誰かをポカポカにできるって凄いよね。」

 そこまで言うと、その『美味しいご飯』を思い出しているのか、翼は頬に手を当てて、ちょっとうっとりするような表情を見せる。確かに、以前、ご相伴にあずかった若島津のスコーンは、お世辞抜きに美味しかった。勿論、二人の技術的な問題もあるだろうが、なんと言ってもあの家で出されている食事は基本的に『TWINS』のために、想いを込めて作られている食事だ。美味しくないはずがない。

 でも、その翼くんの笑顔も、僕の胸を『ポカポカ』にしてくれるんだけどね。

 そんなことをこっそり想いながら、三杉は翼に右手を差し出した。

「じゃあ、競争。僕が『TWINS』みたいなすばらしいエージェントになるのが先か、翼くんが美味しいご飯を作れる様になるのが先か。…お互い頑張ろうね。」

「うん。」

 翼も大きく頷いて、三杉の手を握り返す。

 そんなことをしていたら、不思議そうな顔をしながら近づいてくる小次郎の姿が三杉の目に入った。

「やあ。翼くんのあこがれの人のご登場だ。」

 当然ながら、小次郎にこの言葉の意味は全く分からず。聞き返すのも何せ相手が三杉だけに面倒で、小次郎はスルーを決め込んだ。

「?なにやってんだ。お前ら。…ちょっと怪しいけど、とりあえずあの数値でオッケーだとよ。帰るぞ。」

 翼にそう言うと、小次郎はくるりと踵を返した。多くを語る気も、翼が三杉と別れの言葉を交わすのも待つ気は全くないらしい。

 翼は、急いで立ち上がると三杉に別れを告げる。

「じゃ、またね。三杉くん。」

「じゃあ、また。」

 翼が置いて行かれないようにと、三杉が短く応えて手を挙げた。翼も手を挙げてぶんぶんと何回か手を振った後、小走りに小次郎の背中を追いかけて行く。

 そんな翼の背中を見送りながら、三杉は頬杖をついて、ボソリと呟いた。

「なんだかんだ言って、あそこも相思相愛だよなあ。」

 +2が実は『TWINS』フリークだったって事は、結構当時の医療班の中では周知の事実だった。異動によって、一緒に暮らすようになって、そのあこがれが変化したのかとも思っていたけれど、やはり、ある部分では+2は『TWINS』に一目置いて、その仕事ぶりを尊敬していることも分かっている。

「でも、お互いがお互いの憧れっていうのもなんだかうらやましいものだね。」

 そんな呟きは、スタッフルームの喧噪の中に人知れず吸い込まれていった。


END
(2013.09.21 UP)



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