『リクオ、18歳の誕生日』





「こんにちはー、鴆君いますか?」

「リクオ、こんな昼間からどうしたんだよ」

「えっと、鴆君に会いたくて」

「どうせ、夜になりゃ会うじゃねぇか。本家の祝賀会にはちゃんと行くからな。……あっと、少し早いが先に言っておくぜ。リクオ、誕生日おめでとう」

「ありがとう!鴆君!」

「祝いの品は、本家に届けるよう手配してあるから……」

「ボク、鴆君から欲しいものがあるんだ」

「なんだ?」

「これ、この書類のここの処に、署名とハンコを押して欲しいんだけど」

「なになに、……『婚姻届』……(ここに署名とハンコって、『妻』って書いてある。オレは、男だっての!)」

「鴆君、ボク今日で18歳になったんだ。人間の男は、18になったら結婚出来るんだ。ボク、鴆君とのこと、ちゃんとケジメを付けるよ!」

「……あー、ケジメ……(そりゃーオレはリクオと付き合ってるけど、別にそんなのいらねぇのにな)」

「もちろんボクはまだ未成年だから婚姻届には、ほら、お母さんの同意書を付けたし、証人のところに貸元頭の牛鬼と鴉天狗の名前と印鑑も押してあるから大丈夫だよ!」

「(牛鬼達もよく、馬鹿なお遊びに乗ったもんだぜ。どうにか、諦めさせねぇと)……リクオ。これは、人間の制度だろ?」

「うん。この紙も、役場に行って貰ってきたものだよ」

「ここに、『戸籍謄本を添付』って書いてあるけど、オレにゃ戸籍なんて無いぜ。だから、これは出せねぇだろ」

「分かってるよ。……別に、役場に出すんじゃないから」

「なんだって?」

「だから、ケジメだって言ったでしょ?ボク、鴆君とのこと本気だから、こうやって、形にちゃんと残しておきたいんだ」

「リクオ……」

「ボク、鴆君のことが好き。結婚するなら絶対、鴆君じゃなきゃ嫌だ。だから、これはその決意表明って言うか……」

「そこまで言われちゃしょうがねぇな(よし分かった。ままごとみたいなモンだ)」

「え?」

「ここに名前、書けばいいんだな?」

「うん!ありがとう、鴆君!あ、二枚あるから、こっちも書いてね。お互い同じものを一枚ずつ持ってようね!一生の宝物にするよ!」

「(もう18歳って言っても可愛いもんだな)ああ、大事にするよ」

「じゃあ今夜、本家に来てね!待ってるから!」









「……あっ!鴆様……いらっしゃいませ……ほほほ……」

「(何だ?妙な顔してオレんこと見て)ああ、世話になるぜ、毛倡妓。……うひゃっ!(寒っ!……あ、雪女か)」

「ヨウコソイラツシヤイマセ……」

「……ああ。(なんだ、雪女のやつ、棒読みだし、冷気垂れ流し状態だし)」




「薬師一派の鴆、参りました!(……ん?やっぱ、皆でオレのこと変な顔して見てるな)」

「鴆!来たか!さぁ早く座れよ」

「おう。(……って、もうリクオ呑んでんのか?まだ祝賀会、始まってねぇだろうに)……はあぁぁ!?何だそりゃあ!」

「あ、コレか?飾ったぜ『婚姻届』。せっかくの鴆からのプレゼントだからな!」

「わ、わざわざ額縁に入れて!そ、それも、『畏』の代紋の横に飾るな!奴良組の宝だろうが!(これの所為か、皆の妙な顔は……)って、なんだよこの『受理』って朱書きの文字は!?」

「オレが書いたぜ。──こいつは一生、ここに飾っておく!オレの一生の宝だからな!」

「この、うつけ者があぁぁ!!」




(終 20130923)


薬鴆堂の火事が平成20年ならば、平成25年の今年は、リクオ18歳!



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