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「もー、またせっかく貰った依頼料スッちゃったの? 懲りないね」
『うっせー、人間そんな節約してちゃ人生寂しーだろーが。スパイスってもんが必要なんだよ人生には』
「給料は節約しちゃ駄目でしょ。しかもスパイス効きすぎだし、域越えてるじゃない、それ」

夜、行燈の明りでぼやけた輪郭の中で聴く、愛しい人の毎日。
銀ちゃんとの関係に恋人という肩書が着く前から、ずいぶん長い時間を二人で過ごした。だから、恋人になったって何も変わらないと思っていた。

でも実際、銀ちゃんは私の恋人なんだと思うと、そのささやかな仕草すら甘美なものに思えてたまらなくなる。

『いーのいーの、よく言うだろ、若いうちの苦労は買ってでもしろってさァ。あいつらほんとわかってねーわ、人生んな甘いもんじゃねーんだよ』
「またそうやって、正当化しちゃうんだから。ほんと、銀ちゃんには口じゃ勝てないと思うよ」
『なんだコノヤロー。お前は俺の母ちゃんですかー』

ふざけて言ってるってわかってても、銀ちゃんの半生を垣間見た後では、その言葉も若干信憑性を帯びる。
というのは、少々買いかぶりすぎかもしれないけれども。

「今日は? 新八君と神楽ちゃんも泊まり?」
『新八はさっき帰って、神楽は風呂で定春洗ってる』
「定春くんの洗濯かー。それは神楽ちゃんじゃないとできなそうだね」
『まったくよー、あんなでけーもん連れてきやがって、ただでさえあの胃拡張娘一人でうちの家計は火の車だっつーのに』
「そんなこと言っても、実際いないと寂しいんじゃない?」

少しからかうようにそう言ってみれば、電話の向こうで銀ちゃんが少し大人しくなった。

『………まあな』
「ふふ」
『オイ、笑ったな今、銀さんが珍しく真面目に応えてみればよォー、それはないんじゃねーの?』
「だって…、銀ちゃん、かわい」
『あぁ!?』

本当は誰よりも二人と一匹の疑似家族が大好きでしょうがないのに、素直じゃない銀ちゃんが、なんだか可愛くて。
つい本音が出てしまって、銀ちゃんの不満そうな声が返ってきた。

『おまっ、三十路前のおっさんに可愛いはねーだろ。可愛いって単語辞書で調べて赤線引きなさい』
「辞書もってないもん。可愛いよー、銀ちゃんのそういう、ちょっと素直じゃないとこ。大好き」

緩む頬に任せて、ついいつもなら躊躇うことさえさらりと口にしてしまって。あ、と思った時には銀ちゃんの猛攻が始まっていた。

『へーえ、銀さんが大好き? まあ知ってたけどね? お前の気持ちなんてバレバレだけどね?』

口をついて「可愛い」って言ってしまったことは何度かある。その度に銀ちゃんは、急に態度を切り替えて大人の男になって私をからかう。
どうやら、可愛いと言われることが大変不名誉らしい。

「…うん、知ってる」
『あ? 何が? お前の気持ちバレバレだってことが?』
「うん、そう。だって、銀ちゃんの声聞きたいなーって思ったら電話かかってくるし、会いたいなーって思ったら巡回中ばったり会うし、……抱きしめてほしいなあって思ったらぎゅってしてくれるもんね、銀ちゃん」
『………あ、お』
「それって、銀ちゃんが、私が銀ちゃん大好きってこと分かってて、応えてくれてるってこと、でしょ、」

いつもからかわれたまま負けてしまうのが悔しいので、反論に出てみた。出てみたのはいいけど、言いながら段々恥ずかしくなって言葉尻がしぼむ。
隣の部屋で副長とかに聞かれてたらどうしよう。士道不覚悟で切腹させられちゃうかも。

『お。おー、わかってんじゃねーの』

余裕ぶって返しても、銀ちゃんの頬が赤くなってるだろうなってことはわかった。

『わかってんならさ…、俺の気持ちにも応えてくんね?』
「え?」
『お前が、んな可愛いことばっか言うから悪いんだかんな。銀さんに罪はねーからな』

受話器に痛いくらい押し付けた耳元に、囁くような銀ちゃんの気持ちが届いた。
そんなこと言われたら、私このまま寝間着に羽織で万事屋まで走って行けるってこと、わかってるんだろうか。





本当は、今すぐ会いたい









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