こちらは図書館戦争ファンの方へ向けてのメッセージです。 拍手、ありがとうございます。 更新が遅くて本当に申し訳ありません。 堂上教官への愛は開設当初と変わらず、郁にも負けず劣らず愛してます♪ 更新遅いですが、また来てくださったら嬉しいです。 ↓、拍手御礼小ネタSSです。 「うわぁ、綺麗!食べちゃうの勿体な~い」 言いながら丸い瞳を更に丸くさせてそれに見入る郁の表情。 図書館から真っ直ぐ帰途に着けばいいものをわざわざ足を延ばして専門店まで出向くのは、郁のこの顔が見たいからに他ならない。 ごく一般的なこの年代の女性と同じように、彼女も甘いものには目がなかった。他の女性とただひとつ違うところは、郁の場合は体力の消耗の半端ではない職業に就いているおかげで、いくら甘いものを口にしてもダイエットの必要がないというところだろうか。 「しばらく見てていいかな?」 そう彼女が言うから、 「穴が開くぞ?」 と返してやったら郁は楽しそうに笑う。 そしてまた、彼女は実に生き生きとした表情でそれを見つめ始めた。 こんなに小さな存在がそこにあるだけで郁にこんな表情をさせるのだから。たいしたものだと言うべきか少々羨ましいというべきか何と言うべきか。 『堂上教官~。誕生日や結婚記念日にケーキを買うんだったら駅前の店になんか行っちゃダメですよ。図書館から歩いて10分程度の場所にいい店があるんです』 裏路地にひっそりとあるその店を柴崎が見付けたのは、ほんの偶然だったらしい。 寮から一緒に出掛けるのも悪くはないけれどたまには待ち合わせもいいだろうと計画した手塚とのデートで、待ち合わせ場所に早く着き過ぎてしまった柴崎が、まだ時間があるなら周囲の散策といこうかと歩き回っていて見付けた店だ。 このあたりのお洒落な店なら大抵は知っていると自負していた柴崎ですら盲点だったその店のケーキは、見た目も可愛らしく味も絶品。店の雰囲気といい店員の応対といい、すべてにおいて目の肥えた柴崎に文句なく合格点を付けさせた貴重な店だ。 実はその時にあまりの可愛らしさにうっかりケーキを注文してしまい、その所為で待ち合わせに遅れ手塚を待たせて心配させてしまったというエピソードがあったりするのだが。 何度か郁を連れて訪れたことがあるらしいが、その時に彼女が良く注文するのが今リビングのテーブルの上に鎮座しているチョコレートケーキだった。 柴崎からその店を紹介されて以来、ケーキを買う時は必ずその店に足を向けている。 今日は郁の誕生日でも結婚記念日でもない。だが、個人経営で閉店時間の早いその店に、帰宅時間の遅くなりがちな俺の行ける日は限られている。特に記念日でなくとも仕事が早く終わり閉店時間に間に合いそうな時は、大抵寄り道をしケーキの箱を手に帰途に着いていた。 「うーん、崩しちゃうのは勿体ないけどこの甘い匂いの誘惑には勝てない。いただきます」 目で堪能するだけでは物足りたくなったのか、郁がスプーンを手にしケーキを口にし始めた。 それを見届けて俺は手元の新聞へと視線を戻した。 しかし、しばらく時間が経ったころ、 「はい、篤さん」 突然鼻孔に甘い匂いを感じ取って顔を上げれば、スプーンの上にに乗った一口大のケーキのかけらがそこにあった。 そしてその先にスプーンを差し出しつつじっとこちらを見つめる郁の顔がある。 俺に食べさせようとしているのは理解出来るのだが、普段しなれないことをされるとどう対応していいのかが分からない。 「・・・俺はいい。郁の分だからな、それは」 とりあえずそう返すと、郁は納得の行かない顔をする。 「だって篤さん、自分の分買ってないでしょ?いつもあたしの分だけ買って来てくれるじゃない。それはそれで嬉しいけど・・・」 たまには一緒に食べたいなぁ、と思って。 そう続けて口にする郁の手は引っ込められることはなく、今も俺の目の前にケーキのかけらは突き出されたままだ。 いつも郁の分だけを当然のように買って来ていたのだが、意外にも彼女はこんなふうに考えていたのかと改めて知らされた。 しかし、恥ずかしい、という気持ちが起きないでもないこの状況をどうしたものか。 いわゆる、「はい、アーンして」というやつだろうこれは。 「あー、やっぱり抵抗感あるかぁ。そりゃそうだよね、こういうことあまりしたことないもんね」 「あまり、というより・・・・」 初めてじゃないか? と言い掛けたのだが、それは声となって発せられることはなかった。なぜなら、 「そうだよね。篤さん甘いもの好きじゃないし。無理に食べさせちゃ、悪いよね」 言いながら、郁があっさりとスプーンを下げて自分の口へとケーキを運んだからだ。 余程俺とその美味しさを共有したかったのか、彼女が気落ちしたように僅かに表情を曇らせた。 ふたりきりしかいない空間だ。出されたケーキを口にするくらいのことをしたって何も恥ずかしいことなどなかったのに。 一瞬躊躇ってしまったのがいけなかった。俺にも食べさせたいと言う折角の彼女の好意を無にしてしまった。 須らく後悔した俺は、ほとんど目を通した新聞を片づけて郁に身体ごと向き直る。 「やっぱり気が変わった。少し貰おうか」 「え、でも今ので最後の一口だったんたけど」 「いや。まだここにある」 言いながら上半身を少しだけ乗り出して、俺は郁の唇に唇で触れた。 そして口を開けろと舌で促してやれば、郁は素直に俺に従ってみせる。 最初こそ彼女を気遣いながらの行為だったが、何のためらいもなく受け入れてくれた郁に気を良くした俺は彼女の咥内に広がる甘味を遠慮なく味わった。そしてそれは、俺の舌に十分過ぎるほどに伝わって来る。 「――想像していたのより甘いな。でも嫌な甘さじゃない」 唇を放した後で素直にそう言えば、突然仕掛けられたキスに驚いたように呆けた顔をしていた郁ははっと我に返って、 「でしょ?しつこくなくていい甘さなの、これなら篤さんでも食べられると思う。今度一緒にお店行こうね!」 屈託のない笑顔そのままで言われてしまっては、俺に断る理由などない。 ケーキひとつでこれだけころころと表情を変えられるのだから。見ていて飽きない存在だ。 この先も新たな彼女の表情を発見することもあるのだろうと思うと、これからの彼女との結婚生活が実に楽しみに思えて来る。 甘い匂いの立ち込めた空間の中を、放たれた窓から吹き抜けて行く風が肌に心地良い。 このまま時が止まってしまってもそれはそれで悪くない、と思わせてしまうような、それはそんな優しい空間だった。 甘いもの苦手でしたか?教官って。ねつ造してます。 やっぱり当サイトの教官のイメージはコミックの教官ですね。新婚時代。いつまでもお幸せに。 |
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