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姉編=5.5= 「さっき周助君、私に優しいねって言ってくれたけど、私、周助君の方が優しいと思うよ」 突然そう言われて、驚いた僕が「どうして?」と聞くと、君は真っ直ぐと夕日を見つめて、答えを返した。 「私は、好きな人の一番の幸せを望めるほど強くないから。 好きになった人には、やっぱり好きになってほしいと思うし…わがままになっちゃう、きっと」 君と僕の好きな「越前」はまったくの別人である事は先ほど実感したのに、 凛と前を見据える目は重なって見えた。 ――あたしは、貴方の気持ちには答えられない。リョーマの身代わりになる人なんて、この世に居ないのよ 射抜くような視線を投げかけられた時のことを、ふと思い出す。 越前の代わりでもいい、と言った僕に本物の彼女が言った最後の言葉。 それからは、目に見て分かる程あからさまに避けられ、会話はおろか、目すらあわせて貰えなくなった。 ――だったら、どうしてそのままにして置いたの?もしかしたら、不二君の事ちゃんと考えて それは僕が抱いていた淡い期待。 彼女が越前しか見ていないことは分かっていたけど、少しでもいいから、僕を見てほしかったんだ。 夕日を見つめる君の目と、期待が打ち砕かれた時の僕の目が重なる。 ああ、君も――越前が、好きなんだね 自分を見てもらえないと言う諦めと、それでも好きだと思う切ない気持ちが、複雑に入り交ざった目。 心臓をぎゅっと掴まれるような、悔しくて苦しくて、その全てに蓋をしようとする目。 「強くなんてない、かな」 ただ僕は逃げていただけなのかもしれない。 真正面から見据えてきた彼女の目から、気持ちから逃げたくて――彼女の幸せに身を引いたように見せたんだ。 「優しいんじゃない、臆病なだけだよ」 ――好きになってくれて、ありがとうございます あんな事、言われるとは思わなかった。 あの言葉を貰った時、自分が用意していた逃げ道を失ってしまったように感じたんだ。 ――でも、不二君の想いを、大切にしたいです ――それまで、彼女を好きな気持ちは、大事に取っておいてあげてください。 だけど同時に、好きでいいんだと言う暖かさが胸にこみ上げてきて、無償に、泣きたくなった。 越前の後ろ姿を見つけた君が、驚いたように声をあげて、越前がこっちを振り向く。 何でこんな時間まで残ってたのかと聞かれて慌てる姿なんて、以前は想像もつかなかった。 いつも我関せずと言う態をとって、冷めた目で周りを見て、越前を見るときだけが、 凄く優しい目になってた事に彼女はきっと気付いてなかっただろう。 何だかそんな君が新鮮で、僕は思わず庇うように彼女が手伝ってくれてたのだと言ってしまった。 「別にいいッスけど」と言う越前が、まともに見れない。 下手すれば、どうして彼女の気持ちにこたえてあげなかったんだって、堰が切れそうで。 そう言うことは、彼女が望まないという事を、僕は一番知ってるから。 「じゃぁ越前が居るから、僕は真っ直ぐ帰ることにするよ」 そう言って歩き出したとき、君の言葉が胸に過ぎる。 ――彼女なりの答えを、出してくれるはずです 自分達も学ぶから、彼女もきっと学んで帰って来るはず。 だから、それまでその気持ちを取っておいてあげてください、と言った君の目はとても優しくて。 答えられないと言われた僕の気持ちまで、一緒に持ち上げてくれた気がしたから 「ありがとう」 きっと君は、手伝ってくれた事にお礼を言ったと思うだろうけど、伝わらなくていい。 ただ僕が、お礼を言いたかっただけだから 彼女であって、彼女ではない君 ――好きになってくれて、ありがとうございます 君は何かを学ぶために来たといったけど、きっと、 君が来た意味は僕らが学ぶと言う意味も含まれているんじゃないかな、ってふと思った。 彼女が帰ってきたら何て言おうか「おかえり」 ううん、まず最初に伝えなくちゃいけない事がある。 「僕は君が好きだから、越前の代わりじゃなく、僕を見てほしい」 君から教わった事だよ。 この世界に来てくれてありがとう。 願わくば、君の想いが彼女のように潰されませんように +++++++++++++++++++++++++++++ 拍手ありがとうございました! 皆様の一拍手が私達の元気の源です!これからも頑張りますので応援してください! ゆでたまご |
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