斜め後ろを振り返す動作
それは、今までに何度となく見てきた相手のしぐさだった。
始めは癖なのかと思ったが、そうではないのだろう。
最近はめったに目にすることのないしぐさだった。

その視線の先に自分の姿を見つけた相手が気まずそうな顔をするのが分かった。
―げっ―
声は聞こえなかったけれど、相手がそうつぶやくのが分かる。
まるで、秘密にしていたことを見つけられた子どものような反応だった。

悪かったなと思いながらも、見逃すつもりなんてなかった。
自分から視線を逸らせた相手の視界に堂々と入り込んで相手を睨みつける。
そんな自分の行動を予測していたかのように相手は表情を緩めた。
どんなに月日を重ねても、自分には入り込めない領域があると感じずにはいられない瞬間だった。

「俺、今日誕生日なんだぜ」
その領域に割って入りたいと思わなくなったのはいつからだろうか。
「だからといって、お祝いに勝ちが欲しいとかではないだろうな」
その領域よりも自分との領域の方が広くなったと思うのはうぬぼれなのかもしれない。
けれど、
二人だけの領域が心地よいと思うのは自分だけではないと思えた。
「んなものもらわなくても、俺が勝つに決まってるからな」
あははと笑う相手につられて自分の口角が上がる。
穏やかなやり取りではあるけれど、誰も入り込むことのできないひととき。
それは、二人だけの領域でのひとときだった。



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