散髪 ― ヘアーカット ―




 シャキン シャキン


 規則正しく響く音。


「・・・自分で言うのもなんだけど、殺人鬼に髪切らせるなんてかなりのチャレンジ精神だよな」


「かはっ、心配すんなって。俺は兄貴と違って鋏で人を切る趣味はねぇ」


「兄貴、って自殺志願?」


「そ。あー、兄貴あの鋏くれねぇかな。つか、殺して奪う」


「まあ、それは勝手にしなよ。家族の問題に口出しするつもりはないから」


「家族の問題、ね。俺は家族だなんて思っちゃいないがな」


「・・・・・・それでも、お前らは『家族』だと思うよ、私は」


「そーかー?」


 シャキン シャキン


 その手(正確には鋏)はよどみなく私の耳元を撫でていく。


「そうだよ。家族のいない私には少し羨ましいな」


「ふうん。・・・だったらさ。お前、俺の家族になればいいんじゃね?」


「ああ、そうだな。・・・って、は? 今、なんて・・・」


「うおっ、急に後ろ向くなよ。マジ、危なかったじゃねえか。耳とか落ちてないよな、ちゃんとくっついてるよな」


「あ、悪い。大丈夫だ」


 私は前に向き直りながら謝った。


 ヤツは私に呆れたように言う。

「ったくよー。気をつけろよなー。俺が凶器持ってるって忘れるなよ」


「悪かったって」


 ヤツは再び鋏を動かしはじめた。

「でさ、さっきのことだけど。マジだぜ?」


「・・・はあ」


 それ以外になんと答えればいいのだろう。


「で、返事は?」


 ・・・・・・。


「まあ・・・考えておくよ」


「はっ。<無敵>ともあろう者が今すぐ答えないなんて傑作だぜ」


「ほっとけ!」


「ま、今は我慢しといてやるよ」


「ぜひそうしてくれ」


 シャキン シャキン


 規則正しい音の波。


 それがなんだか心地よくて、私はそっと目を閉じた。


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<人間失格>と<無敵>のある日の会話。
本編より糖度が高いような・・・。
さり気なくプロポーズしてますし。
まあ、なにはともあれ。
拍手、ありがとうございました!
* 絵四枚 + SS1個掲載中





ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)

あと1000文字。