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現在拍手お礼は6点で、「呼んでますよ、レンレンさん」「串にその手は届かなくても」「誕生後日」

「三橋君のための保健体育」1・2と「正捕手阿部隆也の苦悩」です。





─ 呼んでますよ、レンレンさん ─





【CAUTION!】ぬるいですけど、ややエロです。苦手な方はご注意下さいませ<(_ _)>





「みっはしー、久し振りー!!」

ドアを開けた瞬間、田島が抱きつく。その勢いに倒されそうになった三橋を後ろから泉が支え、花井が

田島を掴もうと前へ身を乗り出した。


「た、田島くん!久し振り、だね!」


驚きながらも嬉しそうな三橋は、田島に抱きしめられながら、ちらっと後ろの泉を見る。そこには、内心の

苛立ちを完璧に隠し切った、爽やかな笑顔が二人を迎えていた。


「よう田島、良く来たな。」

「泉も久し振りー!あーやっと来れたー!」

「泉、三橋、これお袋から。」

「ありがと、花井。上がれよ。」

「ありがと、花井くん!」


相変わらず田島にしがみつかれたまま、三橋は礼を言う。泉は早速お土産を出そうと、先にリビングへ

向かった。


「田島いい加減三橋から離れろ。動けなくなってるだろ。」

「やだっ。いーじゃん、このまま歩こうぜ、三橋。」

「うん、田島くん、リビングいこ!」


お前ら9組のまんまだな、と花井に言われるのもお構い無しに、じゃれ合いながら三橋と田島が短い

廊下を歩いていく。その有様はルーキーでありながら開幕スタメンだった天才プレイヤー田島の、

球団のお偉方には決して見せられない素の姿だ。

8月のある日、突然田島がやってくる事になった。まだペナントレース中ではあったが、東京への

移動の中日だったので、ちょっとスケジュールを無理して、田島は三橋・泉家を訪ねた。前々から

「行きたい!」とメールで騒いでいたので、花井が調整して、そして道案内したのだった。


「あ、田島くん、花井くん、汗かいた?タオル、持ってくる、ね。」


空調の効いたリビングの空気を出さないように、三橋が注意深くドアを閉め、廊下でスリッパの音を

ぱたぱたさせる。泉は花井のお土産のケーキの箱と皿をお盆に載せ、テーブルへと運んだ。大食いの

田島と三橋の評判が花井の母親にも伝わっているのか、4人の筈なのに箱にはケーキが8個

入っていた。


「そうだ、おしぼりが要るな。レンに言って小さいタオルも、持って来て貰うか。」


それを聞いて二人が、泉を見る。


「泉、三橋のこと、レンって呼んでんの?」

「ああ、最近な。」


突然、何故か花井は嫌ぁな予感に襲われた。それは高校三年間で嫌と言う程味わった、経験則から

くる確信を伴っていた。脳内に危機管理委員会が、突如招集される。


「えーいいなー、オレもレンって呼ぼう!」

「いいんじゃね?名前なんだし、好きなように呼べば。」


そう言いながら泉はリビングを出て、代わりに三橋が入ってくる。


「はい、タオル、どーぞ。」


ニコニコと笑いながら二人にタオルを渡してくるのに、花井も笑顔で礼を告げた。そして田島は、


「レン、サンキュー!」


と早速名前呼びにシフトしたところ、三橋が派手な音を立ててテーブルに激突した。


「お、おい、大丈夫か?三橋。」

「だ、だいじょう、ぶ、だよ・・・。」


ぶつけた足をさすりながら、三橋がその場に蹲る。これっぽちも大丈夫そうでない姿に、花井も田島も

言葉が続けられなかった。


「ぶつけたのか?取りあえずこれで冷やしとけ。後は俺がするから。」


おしぼり用に濡らしたハンドタオルを、客とホストのそれぞれに渡して、泉は飲み物を取りにキッチンへ

向かう。三橋は、泉くん、ゴメンね、と言いながら自分の席に座った。冷えた麦茶を人数分のグラスに

注ぎ、ケーキの箱を開ける。辺りに仄かな甘い香りが漂った。


「どれ食う?」

「オレこれ!レンは?」


どんがらがっしゃーん。


有り得ない物音に全員が振り返ると、三橋が麦茶の海にダイブしていた。


「お、おい、三橋どうしたんだよ。」

「ほら、タオル。」

「レン、大丈夫か!?怪我してねぇ!?」


がらがらぴっしゃーん。


泉が渡そうとしたタオルを取り落とし、今度は椅子に躓き倒れる。良く転ぶ奴、高校の頃からそう皆に

思われていた三橋だったが、それにしても今日は酷過ぎる。花井は自分のおしぼりで取りあえず

テーブルに零れた麦茶を拭取り、田島が倒れた椅子を起こした。


「ゴ、ゴメン、着替えて、くる、ね。」

「おい、脚大丈夫か?わり、ちょっと手伝ってくる。先食べててくれ。」

「あ、ああ。気にすんな。」

「レン、痛ぇとこあったらちゃんと看てもらえよ!」


田島の声を背中に受けて、三橋が自分の履いていたスリッパに躓く。泉が支えていたからさすがに

転ぶのは免れたが、明らかに動揺した様子で、よろよろと力無くリビングを出て行った。

絶対何か有る、その後姿を見ながら花井は思う。けれどそれを追求するのは、決して自分の得には

ならないどころか、更なる騒動を起こしかねない。テーブルを拭け、ケーキを食え、まるで何事も無かった

かの様に振舞え。花井の脳内危機管理委員会の分析が、そう警笛をならしていた。





「お前、動揺し過ぎ。」


泉が笑いを堪えながら、三橋に着替えを渡してくる。濡れてしまったシャツと短パンを脱いだ時、うっかり

脇腹の紅い痕が目に入り、思わず三橋は顔を赤らめた。そんな自分を見ていた泉と目が合い、ニヤリ

とした笑顔を返され、その表情が昨夜の泉と重なってしまう。



(レン、言えよ。どうして欲しいんだ?)

(ふ、ああっ・・・。)

(言わなきゃ分かんねーだろ。・・・レンの言ったとおりに、してやるぜ?)

(や、いずみ、く、ん、ひ、ぁあ。)

(あ、あれか。口に出せねぇような、すげぇやらしーこと、して欲しいんだろ。)

(ち、ちが・・・・・・んっ。)

(ちがう?レンの体は、こんなになってんのにか?)

(ああっ!)

(マジ、エロいな、レンは。どんどん溢れてるぜ。)

(ぃやっ、あっ、だめっ。)

(けど、まだ足りねぇんだろ?)

(んっ、ぁああっ。)

(どうして欲しい?)

(・・・やあっ・・・あぁ・・・はっ・・・。)

(レンがどうしても言えねぇんなら、止めちまうか。)

(ぇ・・・あぁっ!・・・はっ・・・ぁ・・・・ゃ・・・めちゃ、・・・・・・ゃ・・・だ・・・。)

(やなら、どうすんだっけ?)

(・・・・・・ねが、ぃ・・・・・・・・・・、て。)

(声小さくて、聞こえねぇ。)

(・・・ぃ、ずみ、く、・・・ね、・・・も、が、まん、でき、)

(了解。ならもっと脚、開かねぇとな。)



そう一晩中泉に「レン」と呼ばれ続け、何度も何度もイかされて、気が付いたら朝を迎えていた。

その羞恥以外の何物でもない記憶が、まるでスイッチのようになってしまった自分の名前で、

ありありと甦ってくる。あんな事を強請ってしまった、あんな恥ずかしい格好をさせられた、そして、

泉に突き上げられて、堪らずあんな事を叫んでしまった。今までに無く激しい行為の残滓が、まだ

体に纏わり付いているような気さえしてくる。

そして、最も恥ずかしいのは、自分はそれを決して嫌だとは思っていない事だ。多分今度同じ

事を言われたら、もっと簡単に強請ってしまう。その快感を、きっと自ら求めてしまう。一度それを

知ってしまったから、もう引き返す事が出来ない、そんな風に変ってしまった自分に、何より一番

三橋は動揺している。


「そんなに、気持ちかったのか?」

「・・・・・・。」

「だよなぁ。三橋があんな事言うなんて、俺も思っても」

「い、い、ずみくん、いじわる、だっ!」

「ひでぇな、三橋。昨夜はあんなに悦んでたっつーのに。」

「もう、言わないでっ、たらっ!」


着替え終わった三橋が、涙目で泉を睨む。もちろんそんなことには怯まずに、泉は三橋の手を取って、

手の平に唇を押し当てた。


「あそこまでエロい三橋、初めて見た。」


三橋がびくっと腕を戻そうとするのを制して、泉は唇を手首に移動する。


「すげぇ可愛いくて、すげぇヤりたくなって、んで、俺もすんげぇ気持ちかった。」


手首から腕の内側へ舌を這わせて、肘の内側に口付ける。その刺激だけで三橋は、疼いてしまって

堪らない。


「だから、もっとヤらしくなりゃいいじゃん。どうせ俺しか見てねぇんだし。」


そんな台詞とは裏腹な泉の優しい笑顔を、三橋はただ呆然と見つめるしかなかった。泉くんにだけ

見せるオレ、それはつまり、また昨夜と同じ、あの羞恥と快楽。我知らず、三橋は体が震えた。





テーブルを拭き清め終わり、田島と自分のケーキを皿に取りながら、花井が言う。


「なあ田島、名前呼び諦めろ。」

「ええー、なんでー!?」

「なんでって、三橋のあの動揺っぷりは只事じゃねーだろーよ。」

「ちぇー、つっまんねーの!」


田島が八つ当たりのように、ケーキに齧り付く。口の周りをクリームだらけにしたその姿を見かねて、

花井がおしぼりを渡してやった。


「お前プロなんだから、もうちょっと言動なんとかしろって。」

「なんだよ、花井、まだ主将気取りか?」


フォークを握り締め、でっかい目で睨みつけてくる田島を見返しながら、花井は深々とため息をつく。


「おお、頼むから、いい加減、引退させてくれ。」


別に好き好んで主将で居続けてる訳じゃねぇと花井は思うのだが、気が付けばこうして9組連中に振り

回されている。


「なな、三橋昨夜ヤりすぎて、脚がフラついてんじゃね?」

「田島、頼むからそれ本人の前で言うなよ。」

「わーってるって。花井、口うるさ過ぎだろっ!」


そして花井の脳内危機管理委員会は、恐らくこの傾向は何時までも変化しないと、嬉しくも有り難くも無い

分析を、早々に出していた。今度は絶対もう一人連れてこよう、浜田さんがいいかも知れない・・・。

そんな傾向と対策を、花井は人知れずケーキを突付きながら、考えていた。



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