『明烏』
障子越し、染みる光はまだ薄暗い。
なのに、かたわらを暖めていたはずの寝床には
もうあの人の影はない。
聞こえてくるのは浅ましい烏の鳴き声ばかり。
一体どうして、
あの人は小さな鳥たちの囀りだけで目覚めてしまえるのだろう。
私はそんなかすかな音も聞こえないほど、
あなたの腕の中でやさしい夢をむさぼっていたというのに。
口惜しいこと。
あの烏たちさえ朝焼けに啼かなければ、
私はまだあの人の偽りの腕の中でまどろむことができたのに。
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