無残だ。見ていられない。ここまで下手なのか、こいつら。

そう思うしかないほど、二人のレースは酷い。オレから見ると豪樹も忍者弟も本当に下手すぎてどうしようもない。二人の対戦になって早20分。こんなに長引いて決着がつかない原因は二人の方向音痴っぷり。5周目になる逆走を見て、みんな黙っていられなかった。

「あんたたち、いつまで逆走するつもり?」

「ここまで下手とは……」

「情けない」

「一度、やり直したら?」

「ある意味、芸術やな」

なんとなく始まった、レースゲーム大会。オレと左京以外、ほぼ初めて触ったという状況だから、下手なのがいるのもなんとなく予想していた。でも、ここまで酷いと言いださなきゃよかったって思うぞ?

「あー!! うっさいぞ! お前ら少し黙ってろ!」

ミニ四駆のように動いてくれないカートに苦戦しながらも走り続ける豪樹のカートはバナナでスピン。豪樹……。それ、一応、主役キャラだぜ? でも、スピンによって必然的に向きの直った豪樹は、そのまま遠いゴールを目指せる。

やっと終わる。

誰もがそう思った時、豪樹の横を逆走のまま通過する忍者弟の恐竜。それを見た豪樹は

「やっべ、方向違ってた」

とわざわざジャンプして逆走を始めた。……ダメだ、終わらない。

「かっとべー! 漸、勝負だー!」

「話しかけるな!! ……ってあれ?」

逆走したまま盛り上がる二人とそれを諦めながら見ていたギャラリーの前で暗くなるテレビ画面。

「お前らのくだらないレースは見飽きた」

テレビの前でポカンとする二人に、言い放ったのは烈矢。そして、その手にはテレビのコンセント。

「「えー!!」」

がっくりと肩を落とす二人をよそに強制終了と言う展開にギャラリーがホッとしたのは言うまでもない。

この二人、ゲームもそうだけど、ミニ四駆とか忍者とかやってても平気なのか?





Ver.豪樹/ひとし視点


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ランダムで他のパターンもありますので、お楽しみください。全部で8編です!




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