隠れSS 三人娘


「小隊隊員の抱き枕だと?」
 
 ナルキは隠す素振りすら見せずに眉をひそめた。各ファンクラブが競い合うようにグッズを作っているとは聞いたことはあったが、抱き枕を作っているとは知らなかった。
 
「えっ、知らなかったの。けっこう有名な話だよ」
 
「有名って……ちょっと、待て。もしかして、あたしの抱き枕もあるのか?」
 
「ナルキは小隊員になって日が浅いからないと思うよ?」
 
「そうか。それならいいんだ」
 
 ナルキは自分の抱き枕がなかったことに安堵した。もし、誰かが自分の抱き枕で寝ていたら一週間は眠れない日々を過ごしただろう。
 
「ナッキの抱き枕はないって言ったけど……誰の抱き枕があるの?」
 
「おっ、メイっち気になるの?」
 
「気になるってわけじゃないけど……」
 
 メイシェンは顔を真っ赤にして俯いた。ミィフィは顔を真っ赤にするメイシェンを見て感付いた。
 
「わたしの情報だと第十七小隊の抱き枕はニーナ先輩とフェリ先輩だけだよ」
 
「……そう、なんだ。先輩たち……大変だね」
 
 メイシェンは嬉しいような悲しいような複雑な心境を誤魔化すように、棒状のスナック菓子を口に入れた。薄味のせいか噛んでも噛んでも味は分からなかった。
 
「取材した時に、要望があれば他の武芸者の抱き枕も作るって言ってたから、待てばでるかもよ?」
 
「じゃあ、あたしの抱き枕ができる可能性もあるってことか……」
 
「まあ、ないとは言えないけど」
 
「……でないことを祈ろう」
 
 ナルキは溜息を零すとベッドに横になった。
 
「ナッキ、眠いみたいだから今日は寝ようか」
 
「……うん」
 
 メイシェンが頷くと、ミィフィは照明を落とした。ナルキは抱き枕の件が精神的にこたえたのか、仕事で疲れていたのか、もう寝息をたてていた。
 
「……やっぱり、抱き枕なんて嫌だよね」
 
 メイシェンは誰にも聞き取れない声で呟いた。



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