拍手ありがとうございました。
お礼の類司+咲希ちゃんのSSです。

『――そうして、孤独な錬金術師は、仲間と共にいつまでもショーをしましたとさ』
 ドローンから紙吹雪が散り、小型ロボットたちが一礼をする。そのタイミングで一つの拍手が聞こえた。誰も見ていないと思っていたが、どうやら一人の観客がいたらしい。
「すごいすごい! かわいい〜!」
 毛先だけピンクに染まった金髪を、緩く巻いてツインテールに結った女性が笑顔で僕に拍手を送っていた。
「ご静聴ありがとうございました」
「このロボット、全部作ったんですか?」
「そうですね」
「すごーい! かわいい!」
 しゃがみこんでロボットをまじまじと見る彼女は、どことなく彼に似ている気がした。怒っていたかと思えば、観客の笑顔を想像して満面の笑みを浮かべる素直な未来のスターに。
 いや、ころころと笑う彼女に対して、少し失礼だったかも知れないな。
「ロボット、お好きなんですか?」
「ロボットもかわいいとは思いますけど、アタシはショーが好きで。今日も兄と観に行くんです!」
「へえ」
 こんな偶然あるのか。
 確か今日、彼もショーを観に行くと言っていた。妹と一緒に。
 いや、まさか。でも、そのまさか?
 僕のショーを楽しんでくれる姿も似ているし、笑顔もどことなく似ているような気がしてくる。

「あ、お兄ちゃん!!」
「咲希、すまない。待たせた――って類!?」
「いやぁ、こんなことあるんだねえ」
 まさか、と思った時には、覚悟していたけれどいざ目の前に現れると驚くものだ。お兄ちゃんと呼ばれ、兄の顔をした司くんは僕の知ってる司くんではなかった。
「お前、また一人でショーしてたのか!」
「そうだよ。そしたら、こちらのお客様から拍手をいただいたんだ」
「お兄ちゃんのお知り合いさんだったんですね! ねえねえ、お兄ちゃんすごいの! ロボットもぜーんぶ手作りなんだって!」
「そうだろう! 類の演出はすごいんだぞ! オレはこいつの演出に惚れたんだ。今度、フェニックスワンダーランドに観に来てくれ!」
「うん! 絶対行くね!」
 どうしよう。想像絶するほど、目の前の二人が眩しくて見ていられない。キラキラしながら僕を褒めてくれている。すごいと褒められるのは勿論嬉しいけれど、それ以上に羞恥が襲った。
 演出の話だと分かっていても、惚れたと胸を張って言われると居た堪れない気持ちになるんだな。
 お、そろそろ時間だ。と司くんが声を上げる。
「妹が世話になったな、類」
「こちらこそ」
「また観させてくださいね! 類さん!」
「いつでも大歓迎だよ」
 うん。司くんのご兄妹だとよく分かる。
 素直で真っ直ぐで人懐っこい性格。
「また学校でな!」
 手をあげて離れていく司くんと妹さんを見送った後、未だにくるくると回るロボットと紙吹雪を降らし続けるドローンを見る。
 とても嬉しそうな様子だ。
 まるで、僕の心を見透かしたようだね。



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