世界が終わるまで365日の続きの話になります。
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20XX/04/13 前置き長い
《世界が終わるまで345日》
「M551シェリダンだ。水陸両用の空挺戦車で、浮航性のために車体がアルミ合金で造られている。主武装としてM81 152mmガンランチャーが備え付けられていて、これはMGM-51Aシレイラ対戦車ミサイルと通常弾の両方が発射可能だ。つくば市攻略戦の時は、輸送機から空中投下されて陸上戦での主力武器になった」
「前置きが長いよ」
長々としたカイエダの説明にうんざりして、ハマは呟いた。
車体の尻側半分が穴に落ちた戦車を、穴の縁にしゃがみ込んだまま見下ろしている。
緑のない田園地帯を歩いている途中に、この戦車を見つけたのだ。
ランチャーか投下型ミサイルで攻撃でもされたのか、地面に空けられた直径五メートル程度の穴にその戦車は落っこちていた。
カイエダが身軽な動作で戦車のハッチへと近付く。
錆びかけたハッチを無理矢理こじあけて、カイエダは車内を覗き込んだ。
「まだ動きそうだぞ」
「いやだよ」
呟かれた言葉に、即座に否定を返す。
ハッチから顔を上げたカイエダが不服そうにハマを睨み付けた。
「歩きより断然移動速度があがる」
「人を殺す武器には乗りたくない」
駄々じみたハマの言葉に、カイエダは無言で目を細めた。
だが、結局は何も言わずに立ち上がった。
「わかった」
カイエダは、ハマを見ていない。
斜めに傾いた戦車の上に立ち尽くしたまま、どこか遠くを見つめている。
視線の先を追っても、途方もなく続く地面が見えただけだった。
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「送る」から続きの「20XX/04/14 歪な愛」が読めます。
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