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『指先』

ふと掠めた指先に、ドクンと一つ胸が鳴る。
どうしよう…。

その指先の温もりがまだ残ってるみたい。
足を止めた私に土方さんが気付いたのか、後ろ振り向く。

「どうした?」

そう言いながら私の方へ近寄る。
またドキドキと鼓動が早くなる。
無意識のうちに、自分の手で触れた指先を胸の前で握り締めていたらしく。そこに視線を落とすと、土方さんは相好を崩す。
私の手を解し、手を握る。

「あ、あの…!」

まるでなんでもお見通し。

「帰るか。」

でも、何も言わない。
何も聞かない。
おずおずと手を握り返せば、さっきよりもっと強い力で握られた。
早い鼓動が聞かれてしまうんじゃないかと思うくらい、手を繋いだだけで近くなる距離。

「もうおまえは俺の後ろを歩く必要ねえんだよ。俺の女房だ、自信持って俺の隣に来い。」

それが恥ずかしくて出来ないんです。
照れくさくて。
なのに凄く嬉しかった。
土方さんの後半の台詞に、顔が熱くなったけれど。

「また、繋いでもいいですか?」
「手くらいいつでも繋いでやるさ。」






Titl:「群青三メートル手前」
仄恋十題04. 掠めた指先



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